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2005/02/27

配給会社の映画の見せ方『シックス・センス』"Sixth Sense"

 この『シックス・センス』、私はアメリカの映画館で見た。まだ全然話題になっていない時に何の先入観もなくふらっと入った。コール少年の演技にただただ感心し、一緒に恐がり、マルコムと一緒に悩み、そして驚き、最後にびっくりした。

 その地域の映画館では、最後のクレジットまで残って見る人はほとんどいない。みんな話が終わるとさっさと帰って行く。ところがこの映画の時だけは、違っていた。終わった途端にシーンとなって、誰も席を立たなかった。それから、ひそひそとまわりの人たちと話し合い始めた。「え?ってことは…」と。「じゃ、…ってこと?」 こんなことはそれまでに一度もなかったことだった。

 日本の映画館では、この映画が公開された時、最初にブルース・ウィリスが出てきて「この結末を誰にも話してはいけません」と語りかけると聞いてびっくりしてしまった。そんなことをしたら、最後にどんでん返しがあるとバラしているのと同じではないか。

 イギリスの劇場で、もう何十年も上演され続けている有名な探偵物がある。出版もされている話だが、問題の人物が「このどんでん返しを誰にも教えないでください」と観客に向かって話しかけるところが伝統として残っている。しかし、それは全部見終わって、最後の最後に話しかけるのである。

 「最初からわかってしまった」という人たちのコメントを読んで残念な気持ちになった。このブルース・ウィリスの語りかけを宣伝に使って、謎解き競争をさせて観客を集めようと思ったのかもしれないが、それは、本当の意味での味わいをなくすものだと残念でしかたがなかった。

[追記:この文章はつっきーさんの「アンブレイカブル」に触発されて書いたものです。その後もおもしろいコメントのやりとりが展開されています。(2/28)]
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1999年
監督:ナイト・シャマラン(「ヴィレッジ」「サイン」「アンブレイカブル」「スチュアート・リトル」「翼のない天使」)
マルコム/ブルース・ウィリス(「隣のヒットマン」「アンブレイカブル」「アルマゲドン」「フィフス・エレメント」)
コール少年/ヘイリー・ジョエル・オズメント(「ペイ・フォワード」「ぼくの神様」「A.I」「ベイビー・トーク」)
リン/トニ・コレット(「イン・ハー・シューズ」「チェンジング・レーン」)
アンナ/オリヴィア・ウィリアムズ(「ピーター・パン」)
医師/ナイト・シャマラン
*「 」内はその人の作品のうち見たことのあるものの題名

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コメント

こんばんわー。
私も劇場(日本)で観ました。確かにブルース・ウィリスが最初に出てきて、構えて観たにも関わらず最後まで分からなくてビックリした記憶があります。

分かる人にはなんの予備知識がなくても分かるのかもしれません。ちんとんさんの記事を見て思い出したのは、治療する人⇔される人、大人⇔子供の関係で前者のほうが正しいという思い込みをうまく利用したストーリーだったんだなぁということです。すごいですよね。

投稿: 多感な奴@CINEMA IN/OUT | 2005/02/27 22:39

多感な奴さん、こんばんは。

こんな記事を書きましたが、私は騙されやすい観客なので、きっと日本で見ていても騙されていたことと思います。

「思いこみをうまく利用した」という図式のご指摘、感心しました。

以下、「サイン」「ヴィレッジ」のネタバレありです。
 **ネタバレ**ネタバレ**
 ↓↓ ↓↓ ↓↓
その図式、『サイン』では「このサインは宇宙人の来襲のサインに違いない」という思いこみ、『ヴィレッジ』では時代設定に対する思いこみでしょうか。こう考えると、『サイン』の仕掛けは他の2つより手が込んでいるような気がしてきます。

投稿: ちんとん | 2005/02/27 23:46

ちんとんさんが書かれているとおりだと思います。
うまくどんでん返しするためには、
いかにして観客を反対の方向に思い込ませるかが大事なんでしょうね。

ちんとんさんが書かれた『サイン』の記事を見てもう一度観たくなりました。
シャマラン監督大好きです。

投稿: 多感な奴@CINEMA IN/OUT | 2005/02/28 00:36

ちんとんさん、こんにちは。
つっきーもちんとんさんの意見に賛成です。
「シックス・センス」もそうですが、「クライング・ゲーム」も最初にある秘密があるから人には話さないでくださいみたいな注意をされるんですよね。
これって観る前に変な先入観を与えられるから好ましくないと思います。

現に、つっきーも「シックス・センス」は冒頭でラストのオチに気付いてしまったので、あとは自分の予想が正しいかどうか検証しながら観ていたって感じになりましたし・・・。

「クライング・ゲーム」についてはこの映画を観る前に観に行った「ホット・ショット2」のエンド・クレジットの中にネタバラシの悪戯があって、初めから秘密を知った上で観るハメになりました。(笑)

ただ、どちらの作品も先にネタバレしてようがしてまいが、観て面白かったという事実が大切なんだと思います。その意味で両作品ともすごく良い作品でした。

下手な先入観を持って観るより、自然体で観たいものですね。

投稿: つっきー | 2005/02/28 05:13

多感な奴さん、つっきーさん、
コメントありがとうございます。

前の多感な奴さんへのコメントで書き忘れてしまったのですが、「シックス・センス」では、どんでん返しなんて考えてもいない観客を騙す仕掛けがあって、「サイン」では、謎解きをしてやろうという意気込んで来る観客をはめようという仕掛けがあるのだと思います。だからこそ、「シックス・センス」では最初にあんなこと言っちゃおしまいだよねと思うんです。

でも、有名な作品になればどうしてもネタバレするわけで、それでも、つっきーさんのように目の肥えた人に「観て面白かった」と言わせるのですから、シャマラン監督はすごいと思います。

実はこの記事、つっきーさんの「アンブレイカブル」に触発されて書いたものなんですが、書いているうちにずれてしまったので、TBするのをやめたものだったのです。コメントいただけてうれしいです。

投稿: ちんとん | 2005/02/28 08:33

ちんとんさん、つっきーの記事にリンクを張っていただき、ありがとうございます。
元ネタであるつっきーの記事はたいしたことないと思いますが、皆さんがつけてくださったコメントのおかげで充実したものになりました。皆さん、本当にシャマラン監督が好きなんですねぇ。つっきーもですが・・・。(笑)

「目の肥えた」なんて評されると、穴掘って入りたくなりますからご勘弁ください。
ただ単に普通の人より少し多く映画を観ていて、その中でいいなぁと思った作品の感想を書いているだけですので。

つっきーから言わせてもらえば、ちんとんさんや多感な奴さんの方が目が肥えていらっしゃると思います。
過去の記事を見ていると、レビューされている映画の選択がとても素敵ですから。これからもどうぞよろしくお願いしますね。

投稿: つっきー | 2005/02/28 11:36

ちんとんさんが書かれた『シックス・センス』と『サイン』の関係はそうでしょうね。そうすると、ますますシャマラン監督は大変になってきますね。観る人は今度は何仕掛けてくるかって構えてますからね(笑)。「シャマランを探せ!」も手が込んでくるのだろうか。

ちんとんさんの記事は昨日見たときにつっきーさんの記事に触発されて書いたんだろうなーと思ってましたよ。刺激的です、ブログの醍醐味かもしれませんね。

投稿: 多感な奴@CINEMA IN/OUT | 2005/02/28 23:00

多感な奴さん、

私がつっきーさんの記事を見て、このテーマで書きたくなったとすぐわかったなんて、見透かされていましたね。これもまたブログのおもしろさかな。同じテーマで書いているブログ仲間のシンクロニシティ。

これからもよろしくお願いします。

投稿: ちんとん | 2005/03/01 20:52

はーい、こちらこそよろしくお願いします。

投稿: 多感な奴@CINEMA IN/OUT | 2005/03/02 00:11

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