« B級映画自慢『アイドル・ハンズ』"Idle Hands" | トップページ | 『カラー・オブ・ハート』"Pleasantville" »

2005/02/16

『アイズ・ワイド・シャット』 "Eyes Wide Shut"

!!!!ネタバレ注意!!!!
映画を見ていない人は読まないほうがいいよ!

 荒唐無稽、信じられない展開、不思議な人達、唐突な愛の告白、背徳的な空間。なにがなんだかわからないまま、しかし、不気味さとサスペンス的展開に引きつけられて不可解なまま見終わった。

 この謎を解きたくて、アメリカのサイトのレビューを見ていったところ、どこからが夢なのだろうかという論議が展開されていた。え?夢だったの?と意表を突かれたのだが、もう一度、そういう目で最初から見直したところ、納得できた。

 ウィリアム(トム・クルーズ)は何度も魅力的な肉体の女性といいところまで行くのに、毎回、何かしら邪魔がはいって何も起きないで終わる。あの、圧巻の仮面パーティの後、何が起こっても不思議はないような危険が待ち受けているはずなのに、実際には何も起きない。まさに夢だ。さらに、妻の唐突なことばで突然暗転して映画が終わるところを見て、やはり、これは夢だったのだと思った。題名はこのことを示唆しているのだろう。

 平凡だけれど普通に裕福で、世間からは信用される仕事をまじめにこなし、正しい生活をしているウィリアム。良き妻(ニコール・キッドマン)を持つ夫。その深層心理にあるさまざまな願望がこの「夢」に共振していく。そのタブーに関わる部分はすばらしく生き生きと描かれていた。あの屋敷での「儀式」の音楽と歌はすばらしい。静かで、流れるような動きは背徳的というよりは、美しさを感じる。しかし、ウィリアムはその「夢」の中で終始傍観者であり続ける。ただ、見ているだけ、大きく目を見開いて(eyes wide)。といっても夢の中だから目は閉じて(shut)いるわけだ。

 夜の闇のあの青い美しい光と、室内に何度か使われていたオレンジ色の照明は何を象徴しているのだろう。型にとらわれず、自由に想像し、創造する、心理の奥底に隠れている妄想さえも含めたもの、そういう自由な人間の根幹をなすものへの讃歌が描かれているのだろうか。私にはまだ消化しきれていない部分が多いのだが、何度も味わって謎解きをしていきたい魅力を持った映画だと思った。
---
1999年
監督:スタンリー・キューブリック(「シャイニング」「2001年宇宙の旅」「バリー・リンドン」)
音楽:ジョスリン・プーク
ウィリアム/トム・クルーズ(「コラテラル」「ラスト・サムライ」「マイノリティ・リポート」「マグノリア」「バニラ・スカイ」「レインマン」)
アリス/ニコール・キッドマン(「ムーラン・ルージュ」「白いカラス」「コールド・マウンテン」「ドッグヴィル」「めぐりあう時間たち」「アザーズ」「プラクティカル・マジック」)
*「 」内はその人の作品のうち見たことのあるものの題名。

|

« B級映画自慢『アイドル・ハンズ』"Idle Hands" | トップページ | 『カラー・オブ・ハート』"Pleasantville" »

コメント

えぇっ!「夢」だったんですか?
つっきーもあの仮面の儀式のシーンに引き込まれたクチなのです。上流階級の人たちの間ではいかにもありそうなパーティなので、てっきりリアルだと思ってました。(「O嬢の物語」にも似たような展開があったので)

タイトルをちゃんと理解してなかったからなぁ・・・。(苦笑)

結局、二人とも心の中には多少の浮気願望がありつつも、実際にことに及んだわけでなく、ギクシャクしているときには「セックスしましょ」の一言で解決できるんだから、仲が良いってことなのでしょうか。(笑)

でも出演している当人達は、この後離婚しちゃうわけで・・・、なんだかなぁとしみじみ思います。

投稿: つっきー | 2005/02/16 15:32

Fxxkin' dreamなのですか?私も2回は観てるんですけど気づきませんでしたよ。夢にしては整合性があるよなと思いましたが、あのレンタルの仮面がこれ見よがしにベッドに置いてあったシーンは確かに不可解だったですよね。
いずれにしてもキューブリックの映像世界、音楽の使い方は素晴らしいですよね。私の大好きな映画監督です。

投稿: 多感な奴@CINEMA IN/OUT | 2005/02/16 20:47

つっきーさん、多感な奴さん、
コメントありがとうございます。

私は「夢」と言われて、感覚的に納得するところがあったのですが、決め手は?と言われたりすると、「違うかな」などとことばを濁して逃げたくなる程度の感覚です。

ただ、「夢の中で展開する深層心理の豊かさは、たとえ背徳的なものであっても、大切にして、しっかり見つめることに意義がある」というようなメッセージがおぼろげながら感じられてきているのですが…。人間の外側より内側のほうが広い世界があると言われているような…。

他の人の意見も聞きたいなあと思いながら、2度目を見ていました。

投稿: ちんとん | 2005/02/16 21:20

 あの、仮面がベッドにあった場面、不思議でしたよね。

 最初は
1)「家の中に置いておいたのをアリスが見つけてきて、夫のことを想像しながら寝ていた。だから、妻を思う気持ちがこみ上げてきて、もう隠しておけないと泣いた」と思ったのですが、
 もしかして、
2)「仮面の一味が脅しで、家の中に入ってきて、ベッドの上に置いていった。ここまで危険が迫っているのなら、もう隠しておけないと思って泣いた」なんてこともあるかな、などと考えたりもしていました。

 2)の場合は、「詮索するな、これは最後の警告だ」くらいのことは書き残していくでしょうから、違うかな。

投稿: ちんとん | 2005/02/16 22:47

つっきーはちんとんさんの推理の2)だと思っていたんですよね。
仮面の秘密クラブの男達が「深入りするな」という警告のために置いていったと・・・。書き置きがないのはアリスに不要な詮索をさせないためで、本人が見たら何を意味するかくらいわかるでしょって感じ。

夢であれ、リアルであれ、あのパーティは音楽、演出ともに重厚感あふれてて、つっきーは大好きです。

キューブリック監督は「2001年宇宙の旅」でも思いましたけど、謎は謎のまま残しておいて、あとは観た人が好きに解釈すればいいって作品が多くて、なんか宿題を出された気分になっちゃいますね。(笑)

投稿: つっきー | 2005/02/17 02:17

うろ覚えで申し訳ないのですが、そもそもあの仮面は持ち帰ってきたのか、それとも没収されたのかという疑問もあるんですよね。レンタルで返せなかったところを見るとやはり没収されたのではないかと思います。それで推理の2)のように警告として置かれたのかな。メッセージはないほうが逆にコワイですよね。でも人が寝てるところに入ってきて仮面を置くなんて・・・。高級秘密クラブ恐るべし。

もし仮面を持ち帰ってたとしてもレンタル衣装セットを書斎の物入れにカギかけて入れてたので、奥さんは発見するのは難しいのではないかと思われます。

amazon.co.jpでこの映画の小説版を見つけたんですけど、その紹介に「ビルは夢と現実の中を彷徨していく」と書いてありました。あとはつっきーさんの書いているとおり、フレキシブルな解釈の余地を残してるんでしょう。

投稿: 多感な奴@CINEMA IN/OUT | 2005/02/17 23:10

お話伺っていて、ますます推理2)かなという気がしてきました。

多感な奴さんが紹介してくださった「ビルは夢と現実の中を彷徨していく」という文、わかりますねえ。「夢」と言い切るより、このくらいでとらえて、つっきーさんが仰るような「宿題」という形になったほうが余韻がいつまでも楽しめていいかもしれません。

ところで、パスワードの「フィデリオ」なんですが、このオペラ、男装した妻が、囚われの夫を救い出す話だったんですね。そして、その夫を救う時のセリフが「夫ではなくて自分を殺せ」というのだそうです。となると、あの仮面屋敷の出来事は、女(妻とはいえないけれど)によって命が救われるという、パスワード通りの筋書きが進んだことになってしまいます。それを最初から秘密クラブによって仕組まれた「劇」と取るか、深層心理のなせるわざと取るかとなってきて、ますます宿題が増えてしまいました。

投稿: ちんとん | 2005/02/18 00:26

「秘密クラブによって仕組まれた『劇』」というのはそこまで考えなくてもいいのではないかと思います。もともとビルは「招かれざる客」で勝手に行ったわけですし、ビルを助けた(と思われる)女性は亡くなってますので。でも深層心理のなせるわざというのならあるかもしれませんね。

「フィデリオ」がオペラの名前というのは知ってましたが、どういうストーリーかは知りませんでした。情報サンクスです。キューブリック、シャレたことしますね。

投稿: 多感な奴@CINEMA IN/OUT | 2005/02/18 01:30

さるおです。
あ・・・なんか・・・さるおもやばい。ミントチョコに対してはさるおも昔からまったくの同意見です。チョコチップの入ったすげーミドリ色のアイスなんて最悪です。想像するのもいやだよ。
歯磨きチョコと同じ思いをさせて本当にごめんなさい。
でもこの2人、似てるよね(笑)
謝るからさ、また飽きずに遊びに来て下さい。
さるおもまた行くぞ!

追伸:ここにコメントしちゃって本当にすみません。ご迷惑でしたら削除してください。お手数かけます。

投稿: さるお | 2005/05/01 01:28

うわっ、うわー。さらに被害者を広げようとしている。サンドラ・ブロック大好きなのに。…といって、さらに。

元ネタはここ↓
http://kooks.seesaa.net/article/1912849.html#comment

投稿: ちんとん@ホームビデオシアター | 2005/05/01 08:39

さるおです。
今度はちゃんと映画のことを・・・

> 女の人はこんなことを考えているのかと思ってショックを受けた

そうだよね、男子側からの感想として、この驚きってありますよね。

> そういう意味でウィリアムの気持ちがわかる

そうか、女子ってこんな?ってショックを受ける男子の心理が描けている・・・観客にも主人公にも同じショックなんだね。なるほど〜、たしかにこのアメリカの方とさるお、似た感想かもしれませんね。

さるおにとってはちょっと新鮮な感じもします。さるおは"女子はこんなだってことがついに白日の下に晒されちゃった〜"って思って怖かった。今までブラック・ボックスに入っていたのに、重大なヒミツがバレた!みたいな気持ちでした。

投稿: さるお | 2005/05/01 23:50

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/68460/2946358

この記事へのトラックバック一覧です: 『アイズ・ワイド・シャット』 "Eyes Wide Shut":

» 映画鑑賞感想文『アイズ・ワイド・シャット』 [さるおの日刊ヨタばなし★スターメンバー]
さるおです。 『Eyes Wide Shut』を観たよ。劇場で、心して観た、1999年、キューブリックの遺作である。 製作・監督・脚本すべてがスタンリー・キューブリック。 原作はポール・シュニッツラー、脚本はフレデリック・ラファエルによる。 出演は、トム・クルーズ、シドニー・..... [続きを読む]

受信: 2005/04/21 21:52

» ■〔映画評Vol.8〕『アイズ ワイド シャット』(1999/スタンリー・キューブリック) [太陽がくれた季節]
僕はこれまで、「キューブリック(1928―1999)の撮った映画というものには、人をその映画に向き合う前から既に身構えさせる力がある」と感じて来ました、その感覚は今も変わらぬものです。 また、「キューブリックってそうそう好んで観る気にならないなぁ~」等と口にする僕の妻のようなタイプが存在することも、これまでに少なからず感じて来たものです。 僕に取って、キューブリック映画は「1回、2回、3回ほど向き合っただけでは素朴に好きだ、嫌いだとすら言えないや」ということも有りますね…。 例えば... [続きを読む]

受信: 2005/04/27 19:44

» アイズ・ワイド・シャット [悩み事解決コラム]
{amazon}  天才監督{{16522,スタンリーキューブリック}}の遺作となった「{{16523,アイズ・ワイド・ シャット}}」自ら自身の映画の最高傑作だと語る。  18禁に指定され [続きを読む]

受信: 2005/10/21 13:30

» アイズ・ワイド・シャット [ミュージックファクトリーの音楽・映画情報]
今日は、気分的にこの映画を紹介したくなりました↓ タイトル:アイズ・ワイド・シャット 特別版 主演:トムクルーズ 出演:ニコール・キッドマン 監督:スタンリー・キューブリック この映画のお話は、ニューヨークに住んでいる開業医のビル(トムクルーズ)は... [続きを読む]

受信: 2005/11/12 03:13

« B級映画自慢『アイドル・ハンズ』"Idle Hands" | トップページ | 『カラー・オブ・ハート』"Pleasantville" »