『コールドマウンテン』 "Cold Mountain"
-=-=-[あらすじと感想]-=-==
南北戦争に巻き込まれる前、まだ平和な時代、コールドマウンテンに、新しい牧師が、田舎の村には場違いに美しく、労働も知らない娘エイダを伴って赴任してくる。大工仕事や力仕事をしている農民のインマンとエイダは出会った時からお互いに引かれ合うが、ことばを交わす機会も少ない。そして、南北戦争が起こり、インマンは義勇軍となって村を出て行くことになる。
戦争に出ていった男達にとっても、村に残された女達にとっても苦悩の時代が始まる。義勇軍になることなく村に残ったならず者達は「南軍のため」という正義の名のもとに傍若無人にふるまい、女達はますます苦しむ。
生活力を身につけることを一切せず、上流階級として育てられたエイダは、父の死後、苦難のどん底に陥る。そして、そのことを書き綴った手紙を読んだインマンは、脱走兵となり、命をねらわれる危険をおかすことも厭わず、コールドマウンテンへ帰ることを決意する。長い旅が始まる。
一方、エイダは、その間に全く逆の育ちで生活力のあるルビーの助けを得て、たくましく生きるすべを身につけていく。ルビーの影響でエイダは自立した女になり、エイダの影響でルビーは、粗野な中に隠されていた感受性がだんだんと表に出てくるようになり、2人は良きパートナーとなっていく。このあたりが、映画の中で一番楽しいところだ。
最初の、蟻地獄のような場所での戦闘場面で観客は一気に南北戦争の中に引き込まれる。志願して兵士となった主人公インマンが、味方の南軍が勢いを盛り返し、北軍を無惨に殺戮していくさまを見て、一瞬身を引く姿が印象に残る。
戦闘はここでしか描かれない。しかし、この最悪な戦闘場面よりもっと陰惨なことが、戦場以外のところで起きていることを観客は知っていくことになる。戦争が戦場以外にも、いたる所で人々の心が蝕んでいく様子、旅をするインマンが試練を乗り越えて学んで行く姿、ルビーとエイダの心の交わり、それらを控えめな表現でありながら壮大なラブロマンスが包む。
ここからネタバレ、反転して読んでください→井戸に映った不吉な場面が現実のものとなり、死んでいくインマンにエイダが接吻する場面。このエイダの表情には悲しみと共に笑みが浮かぶ。帰ってきてくれてうれしい。戦場で死ぬのではなく、この手の中で死を迎えてくれてうれしい。そういう気持ちがにじみ出てきている顔がこの壮大なロマンスをしめくくる。いや、本当のしめくくりはその先なのだが。
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2003年
監督:アンソニー・ミンゲラ(「リプリー」「イングリッシュ・ペイシェント」)
インマン/ジュード・ロウ(「クローサー」)
「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」「A.I.」「ガタカ」「リプリー」「ロード・トゥ・パーディション」「チューブ・テイルズ」「スターリングラード」「クロコダイルの涙」)
エイダ/ニコール・キッドマン(「ステップフォード・ワイフ」「ムーラン・ルージュ」「アイズ・ワイド・シャット」「白いカラス」「プラクティカル・マジック」「ドッグヴィル」「めぐりあう時間たち」「アザーズ」)
ルビー/レニー・ゼルウィガー(「シカゴ」「ブリジット・ジョーンズの日記」「母の眠り」)
フィリップ・シーモア・ホフマン(「パッチ・アダムズ」)
ナタリー・ポートマン(「クローサー」)
「レオン」)
*「 」内はその人の作品のうち見たことのあるものの題名
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