『プライベート・ライアン』 "Saving Private Ryan"
-=-=-[あらすじと感想]-=-=-
引きずるようにして連れて行こうとした傷ついた戦友。ふと気が付くと、手にしているのは引きちぎられて上半身だけとなった肉塊。水中まで追ってくる弾丸と赤く染まっていく海水を写す水中カメラ。最初のオマハビーチでの戦闘場面のリアリティには凍り付いてしまった。自分が画面のこちら側の安全な場所にいるのに、身が縮むような恐怖感とどうやっても助かるわけがないという虚無感から逃れられなかった。
このビーチを突破し、上陸したジョン・ミラーキャプテンに新たな使命が課せられる。それは、この戦闘で2人の息子を、また別の戦闘で1人の息子を相次いで亡くした母親の元へ、最後に残った末息子で行方不明になっているジェームズ・ライアンを探し出して本国へ送り返すこと。ミラーキャプテンは、選りすぐりのメンバー8人。射撃の名手、ドイツ語とフランス語のわかるエリート、医療専門の隊員などと共に任務遂行するために最前線へと進む。
英雄伝という描き方ではなく、「なぜたった1人のために8人の命を危うくしなくてはならないのか」「自分達にも母の元に帰る権利はある」といった疑問や、戦闘の恐怖に打ち勝てない心の弱さなどがしっかり描かれている。
しかし、私の心には割り切れなさが残った。最初の戦闘場面では戦闘の理不尽さに圧倒され、嫌悪感を抱いて見ていた。その後、アメリカ兵8人の個性を描写するエピソードを見て、親近感を抱いた。そしてさらに、8人がドイツ兵を殺しながら目的遂行のための戦闘場面に至ると、今度は壮快感を持って見だしたのだ。しかし、この戦闘場面は最初の戦闘場面の裏返しに過ぎないのだ。こういう気持ちを抱く自分の、観客としての身勝手さを感じ、映画の恐ろしさを感じた。
---
1998年
監督:スティーブン・スピルバーグ(「ジョーズ」「未知との遭遇」「E.T.」「インディ・ジョーンズ」「A.I」「マイノリティ・リポート」「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」「ターミナル」「ミュンヘン」)
キャプテン・ミラー/トム・ハンクス(「フォレスト・ガンプ」「グリーンマイル」「ユー・ガット・メール」「キャストアウェイ」「ロード・トゥ・パーディション」「チャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」「ターミナル」)
メリッシュ/アダム・ゴールドバーグ(「ビューティフル・マインド」)
アパム/ジェレミー・デイビス
ライアン/マット・デイモン(「ボーン・アイデンティティ」「オーシャンズ11」「小説家を見つけたら」「リプリー」「グッド・ウィル・ハンティング」)
*「 」内はその人の作品のうち見たことのあるものの題名
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
TB有難うございます。私こそ勝手にTBさせて頂いちゃってごめんなさい。
‘自分が画面のこちら側の安全な場所にいるのに、身が縮むような恐怖感とどうやっても助かるわけがないという虚無感から逃れられなかった’
って書かれていたのに、そうそう!私も全く同じだった!と思ってTBしたくなっちゃったのでした。でも、私はお蔭で逆にそれまでちょっち苦手だったスピルバーグという監督を「天才!」と認めて一方では心中で拍手喝采でした。
上陸すら果たせぬまま、一度も敵に発砲することなく失われていく命の多さ。それでも突撃命令が出れば恐怖を押し殺し、何も感じない機械のようなものに自分を貶めて、闘っては死に逝く兵隊さん達…かの大戦では英米だけでなく、ドイツ含む欧州各国や日本を含むアジアの国々でもどれほど多く、そういう方々がいらしたかと思うと、哀しくて本当に涙です。
‘「なぜたった1人のために8人の命を危うくしなくてはならないのか」「自分達にも母の元に帰る権利はある」といった疑問’
これも、私も観ながらずっと考えあぐねていて、その為に命を落とされた部隊の皆様が可哀想で可哀想で。ちょっと涙しちゃいました。せっかく、せっかくノルマンディ生き延びたのに!
私の方のコラムでは、あれは一応依頼されて書いたもので、何せ文字数制限がありましたもので、ちょっとドライな視点で纏めちゃったけど、本当はこの映画に関してはかなり涙ボロボロのウェットな感想を抱いてたんです。
では、またちんとんさんの映画ログけっこう好きなんで読みに来ますね。リンクもはらせていただきます、近日中に。でも、万一御迷惑でしたらおっしゃってください。
追伸:ニコールちゃん、お好きとのことで。実は、私彼女が初めて日本に来日した際の通訳兼付き人だったんですよ♪2月7日にその想い出をファンレター形式で綴ってますので、よろしかったらお読みください。
投稿: 岡枝 to ちんとん様 | 2005/02/24 02:32
岡枝さん、コメントありがとうございます。
ニコール・キッドマンが来日した80年代に通訳&付き人をされたとのこと、いいですね。そういうご経験があると、作品もまた違った感じで見えてくるのでしょうね。
投稿: ちんとん | 2005/02/24 20:46