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2004/12/31

『母の眠り』 "One True Thing"

-=-=-[あらすじと感想]-=-=-

 母親役のメリル・ストリープが、抗ガン剤治療で衰弱していき、その中で、キラリと見せる美しさ、やさしさ、すさまじさのすべてをとことん演じ切っている。最後まで哀しいストーリー。

 エレンは野心を持ち、ニューヨークのジャーナリズムの世界で働いている。父は、大学教授で小説家でもあり、エレンにとって尊敬する憧れの人だ。一方、家をきれいに整え、季節季節の飾り付け、行事の料理に心を砕き、地域の福祉活動も熱心にしている母ケイトとは波長が合わず、ああいうふうにはなりたくないと思っている。

 ところが、その母が進行癌に掛かっているが判明し、父はエレンを家に呼び寄せる。仕事を続けることも困難になり、ボーイフレンドとの仲も悪くなるという犠牲を払い、母の看病と家事をするエレンに見えてきたのは、尊敬していたはずの父の別の面。そして、母への気持ちにも変化が生じてくる。

 割れた皿をモザイクのように張り合わせて装飾を作るケイトの趣味は、家族とその中でのケイトの役割を象徴するものでもある。ケイトがエレンに伝えたかったことを語るシーンはすばらしい迫力。

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1998年
監督:カール・フランクリン
母ケイト/メリル・ストリープ(「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」「めぐりあう時間たち」「ミュージック・オブ・ハート」「マディソン郡の橋」)
父ジョージ/ウィリアム・ハート(「ヴィレッジ」)
娘エレン/レニー・ゼルウェガー(「コールドマウンテン」「ブリジット・ジョーンズの日記」「シカゴ」)
息子/トム・エヴェレット・スコット(「デッド・マン・オン・キャンパス)
*「 」内はその人の作品で見たことのあるもの

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2004/12/30

『永遠のマリア・カラス』 "Callas Forever"

-=-=-[感想] ネタバレなし-=-=-

 マリア・カラスって本当にすごい人だったのだなと思った。映画化されたという「カルメン」、見てみたかったと思う。

 マリア・カラスは、日本公演の声が最悪だったことで傷ついている。ジャクリーンと一緒になったオナシスが亡くなってからは1人寂しくパリの家に籠もって暮らしている。出なくなってしまった声で、昔の自分の声のレコードに合わせて歌い、泣き崩れる場面は悲痛だ。

 そんな日々を送っていたのだが、プロデューサーのラリーに、全盛期に録音した声を使って新しいオペラ映画を作ろうと説得される。そして、今までに演じたことのなり「カルメン」に挑む。一時は生き生きと演技し、情熱的にフラメンコの練習をするカラスがよみがえるのだが…。

 カラスのわがままに辟易しながらも、共に歩む、プロデューサーのラリーと評論家のサラの存在が共感できる形で描かれている。

 昔の若さ、そして若かった頃にできたことを思い、悲しく感じるのは平凡な人生を送っている人でも同じこと。マリア・カラスを描くことによって、それがより明確に描き出され、理解され、そして普遍化され、共感を生む。「平凡な人生だったらもっと幸福だったのに」なんて、最後に言わなくてもいいのに。

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2003年
監督:フランコ・ゼフィレッリ
マリア・カラス/ファニー・アルダン
ラリー/ジェレミー・アイアンズ
サラ/ジェーン・ブローライト

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『輝きの海』"Swept form The Sea"

-=-=-[あらすじと感想] ネタバレなし-=-=-

 難破船から落ち、イギリスのコンウォールにある海辺の小さな閉鎖的な村に流れついたよそ者(foreigner)ヤンコと、その生い立ちのため「魔女」と陰口を叩かれ、村の仲間として扱われずに生活しているエイミーとの恋の物語。

 "エイミー・フォスター"(ジョセフ・コンラッド)という原作に基づく映画。原作では、エイミーが魔女と言われるようになったいきさつや、彼女の生い立ちに基づく風変わりな行動や、エイミーを愛することができなかった母親の気持ちがもっと詳しく、納得できる形で語られているのだと思う。

 映画のほうは、海に臨む絶壁に立つ小さな小屋、カモメが鳴く、まだ伝説が生きていそうなコンウォールの海など、事情は深く語られずとも、目と耳に訴えかけてくる「海」をテーマとした映像と音楽によって、エイミーの満たされたい気持ち、孤独感、強さなどが、感覚を通じて納得されるように描かれている。

 "Swept from The Sea"という題名が表している通り、ロシアの移民を乗せた難破船、高い断崖から海を望むエイミーと男の子、海の中の洞窟にある秘密の空間にある宝物(ガラクタ)は、エイミーにとって大事な海からの贈り物。大事なものはすべて海からやってくる。そして、ヤンコも外の世界から来た大切な人。さまざまな困難を克服して愛情を育んでいくのだが、さらなる困難が…。
 
 『ウィンター・ゲスト』と共にこの作品は、イギリスの海辺の風景が好きな私にとって特に思い入れのあるものとなっている。

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1997年
監督:ビーバン・キドロン
ヤンコ/ヴィンセント・ペレズ
エイミー・フォスター/レイチェル・ワイズ(「ナイロビの蜂」「ハムナプトラ~失われた砂漠の都」「スターリングラード」)
ケネディ医師/イアン・マッケラン
*「 」内はその人の作品のうち見たことのあるものの題名

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2004/12/28

『キューブ』"CUBE"

-=-=-[思い出したくもない感想] ネタバレなし-=-=-

 こわくて、こわくて、もう途中、何度も、借りてこなければ良かったと思った。もともと、血が飛び散ったり、傷口が大写しになるのは苦手だったのに、内容を知らないまま借りてしまったのが悪かった。

 迷路の中の仕掛けで人が無惨に殺されていくというのももちろん、こわいが、それ以上に、人間が正気を失っていってという部分と、全体に流れる「絶望」というメッセージにすっかり気落ちしてしまった。

 1人1人は目の前にある小さな仕事を一生懸命こなしていく。それが一番の方法だと思いながら。しかし、1人1人の成した仕事が全体として形を表す時、それは必ずしも個人が意図していたものとは一致せず、とんでもなく邪悪なものとなり得る。そういう考え方をさまざまな角度から、これでもかこれでもかと見せつけられているような気がした。

 最初のほうで、何本かのピアノ線みたいなもので死んでいくあの死に方がもう、何度も悪夢で出てきて、見たことを後悔してしまった。

 だから、"CUBE"meets"Seven"(『キューブ』と『セブン』を合わせたような) の "Saw"は絶対に見られない。

 絶対に見たくないと言っておきながら『CUBE2』も見てしまった。[2005.2.5追記]
さらに『CUBE ZERO』も…。そして、がっかりした。なにやってるんだろう。[2006.5.28追記]
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1997年
監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ
モーリス・ディーン・ホワイト
ニコール・デ・ボアー
ニッキー・ガダーニ
ディヴィッド・ヒューレット
アンドリュー・ミラー

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『ソウ』"Saw"

-=-=-[ノベライズ版を読んでの感想] ネタバレなし-=-=-

 …ぅううう。どうしても見られなかった。どうしても見たかったのだけれど……。血がドバーッと流れる映画が苦手な私。特に、『キューブ』"CUBE"はだめだった。しばらくの間、ずっと引きずったもの…。結局、本(映画のノベライズ版)に逃げた。ごめんなさい。以下は本のレビュー。

 「ジグソーパズル(Jigsaw)」 の sawと「のこぎり」のsaw、それに「見る(see)」の過去形sawに掛けたと題名だが、本当にその通りだった。本なのに、かなり気持ち悪かった。

 古いタイル張りのバスルーム。部屋の両方の隅に足かせをはめられた男が2人。真ん中には血を流した死体。2人の鎖は短く、死体にも届かない。そこには、究極の選択をしながらの生き延びる道がヒントとして隠されているのだが、それは実におぞましいもの。他の犠牲者達の、殺人トリックも気持ち悪いものばかり。才能は感じるが、背筋が凍るような才能だ。

 本であったからか、かなり早い段階で、おおかたの謎は予想がつく。だが、映像で見なかったせいか、医師ゴードンの冷静さと熱い思い。そして、頭脳を働かせてのいさぎ良さには救いを求めたくなってしまう。たとえ、その傲慢さで、生を、そして命を、粗末にしてきたのだとしても…。

 それぞれの視点からの映像は、何人称の目線で撮られていたのか知りたい。映画を見ても同じような感想を持つのだろうか…。知りたい。…でも、いや、やっぱりこれを映像で見せつけられるのは勘弁してほしい。降参。

*この記事を書いた9ヶ月後、結局、見てしまいました。その記事はこちら
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2004年
監督:ジェームズ・ワン
ゴードン医師/ケアリー・エルウェズ
ゴードンの妻/モニカ・ポッター
アダム&原案/リー・ワネル(「マトリックス・リローディッド」)
*「 」内はその人の作品のうち見たことのあるものの題名

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2004/12/27

『真夏の出来事』 "Head Above Water"

-=-=-[あらすじと感想] ネタバレなし-=-=-

 キャメロン・ディアズが演じる、かわいくて、純なのだけれど、おばかさんとしか言えないヒロインが実に魅力的。おばかな女の子をかわいらしく、魅力的に描く映画は許せないと常々思っているのだが、この映画だけは特別に見逃す。だって、そこがおもしろいのだもの。

 火のないところに立ってしまった煙を消そうと、へたな嘘の上にまたへたな嘘を重ねていき窮地に陥っていくという、コメディであると同時に、手に汗握るサスペンスでもあるストーリー。「絶体絶命の窮地なのに…。ああ、そんなへまをして」「なんで、そんなことに気付かないの」「またまた、へんな小細工するから…」「ああ、それ死体じゃない…」とハラハラしていくうちに、実は見ている側も一緒に、同じ罠にはまっていき、どんでん返しが…そして、さらにまた、新たなるどんでん返しが暗示され、映画は終わる。

 ラブロマンス・サスペンスコメディ(?)。追いつめられていく人間の必死な姿というのは、コメディと紙一重だったというのが新たな発見だった。

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1996年
監督:ジム・ウィルソン
ジョージ/ハーベイ・カイテル
ナタリー/キャメロン・ディアス(「イン・ハー・シューズ」「メリーに首ったけ」「バニラ・スカイ」「ギャング・オブ・ニューヨーク」「シュレック」「マルコヴィッチの穴」「ベスト・フレンズ・ウェディング」)
ケント/ビリー・ゼーン(「タイタニック」)
*「 」内はその人の作品で見たことのあるものの題名。

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2004/12/26

『サイン』"Signs"

[読み解き] 注意!ネタばれするかも!
××××××××××××××××××
××                    ××
×× !!ネタバレするかも!!   ××
××                    ××
××××××××××××××××××
××××××××××××××××××
×× 先入観なしに見たい人は    ××
×× 読まないほうがいいかも!   ××
××××××××××××××××××

 ミステリーサークル、水についての警告、ドアについた不思議な模様、いかにも思わせぶりな、宇宙人からのサインのような事柄が次々と出てきて、目に付き、謎解きがしたくなる。

 しかし、この謎解きにばかりとらわれていると、B級映画だの失敗作だのと言いたくなる。それは、目先のまやかしのトリック。実際、宇宙人はなんだか説得力に欠けるし、子どもも犬もなんだか変だ。

 そこを離れて、もうひとつ外側を考えてみると、もっと大きな輪があることに気付く。実にまじめに、宗教的問題を正面からとらえた、別の「サイン」の構図が見えてくる。それに気付いた時、すべてがストンと心に収まるのを感じる。ものすごくわかりやすい主張。見終わった時、謎解きの爽快感が広がるのを覚えた。

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2002年
監督:M・ナイト・シャマラン(「翼のない天使」)「シックス・センス」「アンブレイカブル」「ヴィレッジ」)
グラハム・ヘス/メル・ギブソン
弟メリル/ホアキン・フェニックス(「ヴィレッジ」「グラディエーター」「リターン・トゥ・パラダイス」)
*「 」内はその人の作品のうち見たことがあるものの題名。

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『ブルース・オールマイティ』"Bruce Almighty"


 バッファローテレビのレポーターのブルースは、お笑いのようなレポートばかりさせられている。ある日、認められるチャンスが訪れたかに見えたが、逆転、アンカーの座はライバルに奪われることに。神を呪ったブルースに神が現れ、ブルースにオールマイティ(=全能)の力を授ける。そして始まる笑いの数々。

 神の力を授かったブルースが、レストランのスープに向かってまじめな顔になった時、どうやって自分の力を試そうとしているのかわかって笑いこけてしまった。他にも、タイタニック、グリーンマイル、ジュマンジなどの映画のパロディがあった。きっと、私が知らないものも満載だったのではないかと思う。

 もちろん、ただのお笑いばかりではない。グレースの女心がとてもかわいい。また、この映画自体、「たくさんの映画に出演しているのに、アカデミー賞のお声もかからない…。(がっくり落ち込んだ様子)」とお笑いのキャラクターそのままでインタビューに答えたりするジム・キャリー自身を自虐的に描いているのかもしれないと思った。

2003年/監督:トム・シャドヤック「パッチ・アダムズ」「ライアーライアー」/ブルース:ジム・キャリー「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」「マジェスティック」「トゥルーマン・ショー」「ライアーライアー」「エターナル・サンシャイン」/神:モーガン・フリーマン(「ディープ・インパクト」「ショーシャンクの空」「ドライビング・ミス・デイジー」/グレース:ジェニファー・アニストン *「 」内はその人の作品で見たことのあるものの題名。

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2004/12/24

『プラクティカル・マジック』"Practical Magic"

-=-=-[感想とあらすじ]ネタバレなし-=-=-

 魔女の血を受け継ぐオーウェン家。白魔術を扱う家系なのだが、不幸なことに、オーウェン家の女性には、男性を好きになると、その男性が早死にするという血が流れている。主人公サリーとその妹ジリアンの母も、そして、2人を引き取って育てることになった叔母達も夫に早く死なれている。

 ジリアンはそんな言い伝えには頓着せず、惚れ薬とセクシーさを武器に人生を楽しむ。一方、サリーは愛する人に早死にされるような不幸な目にあいたくないと考え、幼い時に、現実にはありえない「右目が青で左目が緑」などという男性像を描き、その人と恋に陥るという魔法を自分にかける。そして、魔法を使うことを禁じ、まじめに、自分を律しながら生活していくのだが…。

 オカルトのようでもあり、サスペンスのようでもあり、ロマンスのようでもあり、コメディのようでもあり…。しかし、そういうジャンルを越えたところに、しがらみから放たれて自由に生きよ!という女性へのメッセージを感じる。男運の悪い人、型にはまって窮屈に生きている人、夫に早死にされた人、失恋した人、そしてもう若くはない女性達にも「元気に生きよう!」と言っているように思えた。

 最後のほうの、女性達がほうきを持って集合してくる場面は壮快。普通の女性達ももしかすると、少しばかり魔女なのかもしれない…と思えてくる。

 サリー役のサンドラ・バロックが、話の展開に伴って、段階的に違った美しさを見せ、輝きを増していくところがすばらしい。また、ジリアン役のニコール・キッドマンの、2面性を演じ分ける演技力もみどころとなっている。

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1998年
監督:ダリフィン・ダン(「ザ・インターネット)
サリー/サンドラ・ブロック(「クラッシュ」「恋は嵐のように」「あなたが寝ている間に」「ザ・インターネット」)
ジリアン/ニコール・キッドマン(「ムーラン・ルージュ」「アイズ・ワイド・シャット」「白いカラス」「コールドマウンテン」「ドッグ・ヴィル」「めぐりあう時間たち」「アザーズ」)
フランシス/ストッカード・チャニング
*「 」内はその人の作品のうち見たことのあるものの題名

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2004/12/23

誰か、このクリスマスストーリー、知りませんか?

-=-=-[こういうあらすじのクリスマス・ストーリー、誰か見たことありませんか?]-=-=-

"One Amazing Night"という題名だったと思う。『世にも不思議なアメージングストーリー』のうちの何巻目かに収録されているはず。

いろいろなクリスマス・ストーリーを見てきたが、これは一番好きな作品。英語版を一度だけ見たことがあるだけで、その後、見る機会がないまま過ぎてしまった。でも、その一度だけの印象がずっと残っている。

クリスマスの夜、サンタさんが、プレゼントを配って回ろうとある家に忍び込んだところ、警報機が鳴ってしまう。そして、そこに駆けつけた警官につかまえられて、サンタさんはブタ箱行き。ブタ箱には先客が何人かいる。皆、サンタの姿。驚くサンタさんだが、実は、先客のサンタ達は皆、こそ泥。

本物のサンタさんは、早く出してもらってプレゼントを配らないとと焦るが、他のサンタ姿の泥棒たちは、「わかったわかった。もうサンタのふりをすることはない。みんな仲間なんだから」と取り合わない。

警官に至っては、そもそもサンタという存在自体を憎んでいるらしい。そして、警官がどうしてサンタを憎むようになったかがだんだんとわかっていき、最後には感動の結末が…。

一度見た後、手にする機会がないまま、良いイメージだけが広がってしまっているのかもしれないが…。このビデオ、日本でも売られているのだろうか。そもそも題名は、これでいいのか。誰かご存じありませんか。もう一度見てみたいんです。

*教えてくださったかたがいて、わかりました。この話、「世にも不思議なアメージングストーリー Xマススペシャル」の中の第4話「52年目のクリスマスプレゼント」というものだったそうです。テレビ・ドラマだったんですね。日本では1991年の放映だったようです。(追記:12/24クリスマス・イブ)

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『フル・モンティ』 "Full Monty"

 底に流れる悲哀、ペーソスがなんともいえず、暖かい気分にさせられる映画。

 イギリスの田舎町はいくら煉瓦がずれて、柱がゆがんで、屋根瓦がでこぼこになっても、それがいっそう良い風情となるのに、一旦工業化されてしまった街並みは古くなり出すと、途端に殺風景になっていく。そんな街、シェフィールドに住む男たち。その雰囲気が、風景と独特な英語のなまりから伝わってくる。

 失業した男たちが考えたのは、ストリッパーになって金儲けすること。仲間を集めるためにオーディションを開く。応募して来た人たちもまた、失業者。そこまでは落ちぶれていないという心の底にあるプライドや自信のなさがそれぞれの"脱ぎっぷり"に表れる。しかしそういう男たちも…。

 「男のストリッパー」という奇抜な題材を通して描かれているものは、失業した心の底にあるわだかまり、壊れてしまった家族愛、逆に修復されていく家族愛といった共感を持つことのできる、ごく普通の人間模様。

 テーマ曲になってもいるあやしげな曲。それが、やさしい人間模様と結びつき、なんだか懐かしい響きさえ感じるようになってくる。CDを買ってしまった。

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1997年
監督:ピーター・カッタネオ
ガズ/ロバート・カーライル(「ザ・ビーチ」)
ジェラルド/トム・ウィルキンソン(「オスカーとルシンダ」「恋におちたシェークスピア」「ラッシュアワー」「エターナル・サンシャイン」)
デイブ/マーク・アディ
ジーン/レスリー・シャープ
ホース/ポール・バーバー
ロンパー/スティーブ・ヒューイソン
*「 」の中はその人の作品のうち見たことのあるものの題名。

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2004/12/22

プレゼント下手のみなさんへ、映画好きの私から---『ナイトメア・ビフォー・クリスマス』

 プレゼントをあげるのが下手。がんばって探しても、全然喜ばれないものをあげてしまう不器用な私。だから、映画『ナイト・メア・ビフォー・クリスマス』"The Nightmare Before Chiristmas"を見終わると、ハッピーエンド風の終わり方なのに、ジャックが可愛そうでたまらなくなる。

 ハロウィーンの国のパンプキン・キング、ジャックは、ある日クリスマスの国に迷い込み、新しい世界にすっかり魅せられる。そして、今年のクリスマスは自分がプロデュースをしようと思い立つ。

 しかし、ジャックの作ったプレゼントはハロウィーンの雰囲気満載の気味悪いものばかり。監督のティム・バートンの才能が十二分に感じられる魅力のあるプレゼントが大量生産されてくるのだが、それは子どもにとって、怖ろしいものばかり。クリスマスの夜は子どもたちの悲鳴が響く混乱の夜へと一転する。

 でも……と思う。ジャックはいいことをしようとしただけじゃない。とっても楽しく、幼い子どものようにキラキラ輝いて、喜んで、創意工夫に満ちたプレゼントをあげようとしただけじゃない。どうしてこんな目に遭わないといけないの? 決められた運命、定められた道と違ったことをしてはいけないの?

 ハロウィーンの不気味な世界は魅力的で、何回も見たくなる。そして、何回見ても、悲しくなる。大好きな映画なんだけれど…。不器用で、上手にプレゼントをあげられない人達、思い出プレゼントなんて1度もあげたことがない人たち、いっぱいいるはずだよね。

*今週も「トラックバック野郎」のお題、「思い出プレゼント」に挑戦です。
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1993年
制作・原案:ティム・バートン
ジャックの声/ダニー・エルフマン
ジャックの歌/クリス・サランドン
サリー/キャサリン・オハラ

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2004/12/21

『アザーズ』 "The Others"

-=-=-[あらすじと感想] ネタバレなし-=-=-

 ジャージー島の広い屋敷に、光を浴びると死んでしまうというアレルギーを持つ幼い娘と息子と共に住むグレース。夫は従軍したまま帰ってこない。留守を守るグレースは、敬虔なカトリック教徒で、子どもたちに信仰に満ちた正しい生活を送らせようと、健気に必死に、そして時にはヒステリックに教育する。

 しかし、なぜかある日、使用人たちは突然いなくなり、誰も訪ねてこなくなる。そこへ、3人の使用人が現れる。この3人がそれぞれに静かに怖く、なぜか魅力があり、引き込まれてしまう。

 その頃から、屋敷の中で、不穏な気配が感じられるようになる。人の気配、足音、話し声、勝手に鳴り出すピアノ。そして、娘のアンは、怖ろしい老婆と男の子を見たと言う。

 やがて真相が明らかになっていくのだが、私は最後の最後まで、わからなかった。振り返ってみると、すべて納得できる。途中でオチがわかっても感動できると思う。こんな形の"ハッピーエンド"があるのかと思った。

 ニコール・キッドマンが実に美しい。その上品さと気高さがはまり役。ジャージー島の霧の中の屋敷も美しい。

*この映画のネタバレに関連したできごとの記事を書きました。→「お墓が見つからなかったお墓詣り
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2001年
監督:アレハンドロ・アメナバール
グレース/ニコール・キッドマン(「ムーラン・ルージュ」「アイズ・ワイド・シャット」「白いカラス」「コールドマウンテン」「めぐりあう時間たち」「ドッグ・ヴィル」「プラクティカル・マジック」)
バーサ・ミルズ/フィオヌラ・フラナガン
チャールズ/クリストファー・エクルストン
アン/アラキナ・マン「真珠の耳飾りの少女
ニコラス/ジェームズ・ベントレ
*「 」内は、その人の作品で見たことのあるものの題名。

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2004/12/20

『ヴィレッジ』 "The Village"

-=-=-[感想と印象] ネタバレなし-=-=-

 森の奥に孤立した村。村の外には「口にしてはいけない怖いモノ」がいる。人々は、夜になるとたいまつを焚き、見張りを立て、貢ぎ物を捧げ、掟を守り、それを怒らせないよう暮らしている。

 暗さと明るさの対比が印象的な映画だ。暗い村の外との境界線に煌々と、これでもかというように焚かれるたいまつ。

 夜になると、街頭もない真っ暗な村に、家の窓と門灯の光が輝くように明るく浮き上がる。その明るい家の中で、隠れん坊をしている子どもたち。アイビーが窓を閉めようとする姿が家の外から見える。そのうしろの棚に、まるで窓枠が額縁になったかのように、おどけた様子で隠れるノアの姿が映し出される。この映像はとても印象的だった。

 暗闇との対比の中に「幸せ」がある。怖ろしい、荒ぶるモノがいるからこそ、それと折り合いをつけたところで「幸せ」が保たれている。そんなことを言いたいのだろうか。

2004年/監督:ナイト・シャマラン「シックス・センス」「アンブレイカブル」「サイン」「翼のない天使」/コモドス:ホアキン・フェニックス「サイン」「グラディエーター」「リターン・トゥ・パラダイス」/シガニー・ウィーバー「デーヴ」「マップ・オブ・ザ・ワールド」「エイリアン1.2.4」/フシアス:コニー・ニールセン「ミッション・トゥ・マーズ」/アイビー:ブライス・ダラス・ハワード/ノア:エイドリアン・ブロディ「戦場のピアニスト」/アイビーの父:ウィリアム・ハート「母の眠り」 *「 」内はその人の作品のうち見たことのあるものの題名。

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2004/12/19

『小説家を見つけたら』"Finding Forrester"

-=-=-[この映画が大好きな理由] ネタバレなし-=-=-

 アメリカはあまり好きな国ではないけれど、お金がない境遇の子でも才能があれば、成功する可能性があり、才能を伸ばすことに喜びを見いだす人々がいるという面を見ると、ちょっとだけ、アメリカっていい国だなあと思う。

 そういう意味で、これは大好きな映画。おまけに、大好きなショーン・コネリーが出ているのだから。低音のマリンバの曲をバックに自転車に乗る姿がもうたまらない。年取ってからがますます素敵!ショーン・コネリー。

 ジェマールとフォレスターの師弟関係が、尊敬の念を持ちながらも、どこか対等であること。そこから醸し出されてくるものがとてもいい。
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2000年
監督:ガス・ヴァン・サント
フォレスター/ショーン・コネリー(「エントラップメント」「ザ・ロック」「グッドマン・イン・アフリカ」「理由」「薔薇の名前」)
ジェマール/ロブ・ブラウン
クロフォード教授/F.マーリー・エイブラハム(「薔薇の名前」)
クレール/アンナ・パキン(「ピアノ・レッスン」)
テレール/バスタ・ライムス
弁護士(友情出演)/マット・デイモン(「ボーン・アイデンティティ」「オーシャンズ11」「プライベート・ライアン」「リプリー」「グッド・ウィル・ハンティング」)
*「 」内はその人の作品で見たことのあるものの題名。

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2004/12/18

『スターリングラード』"Enemy at the Gate"

-=-=-[あらすじと感想] ネタバレなし-=-=-

 祖父から射撃の技を仕込まれたヴァシリ・ザイツェフ。傷のない毛皮を取るために、目を一発で撃ち抜く射撃の技を幼い頃から仕込まれた。一兵卒として戦闘に参加したヴァシリだったが、その腕を見込まれ、天才スナイパーとして使われるようになる。

 自分の気配を消し、相手が動くまで、雪が降ろうが、陽が沈もうが、死体の山が積まれようが、どこまでも身を潜めて時を待つ。

 そんな彼は、同じように身を潜める技を知るナチス側のスナイパー、ケーニッヒ大尉と対決することになる。

 戦闘で街が破壊され、多くの人が死んでいくが、それは無彩色の風景のように見え、対決する2人だけが観客には浮き出て見える。「待つ」ことはなんと難しいことなのか。

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2001年
監督:ジャン・ジャック・アノー(「セブン・イヤーズ・イン・チベット」)
ヴァシリ・ザイツェフ/ジュード・ロウ(「クローサー」)
レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」「コールドマウンテン」「ロード・トゥ・パーディション」「AI」「リプリー」「クロコダイルの涙」「ガタカ」「オスカー・ワイルド」)
ダニロフ/ジョセフ・ファインズ(「恋におちたシェイクスピア」「エリザベス」)
ターニャ/レイチェル・ワイズ(「ナイロビの蜂」「輝きの海」「ハムナプトラ 失われた砂漠の都」)
ケーニッヒ大尉/エド・ハリス(「白いカラス」「めぐりあう時間たち」「ビューティフル・マインド」「トゥルーマン・ショー」「ザ・ロック」「アポロ13」「奇跡の詩」)
*「 」内はその人の作品で見たことのあるものの題名。

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2004/12/16

『戦場のピアニスト』"The Pianist"

-=-=-[あらすじと感想] ネタバレなし-=-=-

 主人公シュピルマンは、弱く、無力だ。体力だけでなく、窮地を切り抜ける機知もなければ、抵抗する才知もない。ヒーローとはほど遠い主人公はただ、助けられるだけ。誰のことも助けられない。持っているものは、純粋さと、それを表現するピアノに秘められた芸術性だけ。同胞の苦しみを目の当たりにしても、彼には何もできない。ぼろぼろになり、飢えていくだけ。

 監督は、平和の中で高い文化と教養を持って生きてきたユダヤ民族を、シュピルマンに重ね合わせて表現したかったのではないだろうか。

 ドイツ兵に占拠された廃墟の街に響くドイツ人作曲家ベートーベンのピアノ曲「月光」。破壊された国ポーランド人作曲家のショパンの「バラード」。よく知っているピアノ曲のはずなのに、新たな意味と思いが込められ、深く心に響いてくる。

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2002年
監督:ロマン・ポランスキー
シュピルマン/エイドリアン・ブロディ(「ヴィレッジ」)
*「 」の中は、その人の作品で見たことのあるものの題名。

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2004/12/15

『ウィンター・ゲスト』"The Winter Guest"

-=-=-[あらすじと感想] ネタバレなし-=-=-

 スコットランドの海辺を舞台にした、しっとり心に染み入る映画。

 海が凍ったある寒い冬の朝、老女が雪の中を黙々と歩いて、夫を亡くした娘を訪ねてくる。意志の強さがそのまま顔に出ている娘フランシスも、最愛の夫を亡くした辛さから、自分の支えとしていたカメラに手を触れることさえできないほど苦しんでいた。

 フランシスの息子アレックスは母を気に掛けつつ、学校へと向かうが、凍った海に続く雪の海岸で、一風変わった娘ニタと出会い、新たな心の触れ合いを見つける。同じ海辺のバス停でバスを待つ老女2人は、葬式に出ることを生き甲斐としているような毎日。海が凍ったその日、学校をさぼる少年2人のまだ幼さの残る「青春」。

 それぞれの登場人物が、違ったストーリーをもちながら、哀愁帯びたかもめの鳴く、寒いスコットランドの海辺の風景に包まれ、ひとつの交響詩のように調和する。たった1日の間に起きたできごとを描いているにすぎないのに、ひとつの力となって「生きること」を謳いあげる。

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1997年
監督:アラン・リックマン(「ハリー・ポッターと賢者の石(出演)」)
フランシス/エマ・トンプソン(「日の名残り」「ラブ・アクチュアリー」)
エルスペス/フィリダ・ロー
アレックス/ゲーリー・ハリウッド
ニタ/アーリーン・コックバーン
*「 」の中は、その人の作品で見たことのあるものの題名

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『ドッグヴィル』"Dogville"

 とても後味の悪い映画。

 ニコール・キッドマン演じるグレースは気品があって、美しすぎる。匿ってくれる村人のために、無償で労働をする。あくまで、優しく、気高く、辛抱強く、正しい。ところが、村人たちはどんどん人間のエゴをエスカレートさせ、醜さをむき出しにしていく。最後にはグレースの人間性まで踏みにじる行為に出るのだ。

 このあたり、演劇の舞台のような抽象的な作りになっていなかったら、あまりにも惨すぎて、見ていられなかっただろう。そして、観客としての私は村人を憎むようになる。

 結末で、思いも掛けない真相を明らかになる。そして私は、気が晴れる自分を感じた。しかし、次の瞬間に、え?何この感情は?と思う。

 エンドロールに、フラッシュのように映る映像を見て、ぞっとした。最後の、この「気が晴れる感情」を持ってしまった自分こそが、ここで批判されているのだと。

[2005/5/9追記]
 その後、トラックバックをたどっていろいろ読んだのですが、おもしろい解釈をしているブログにたどりつきました。今のところ、この解釈が一番気に入っています。本当に納得するためにも、もう一度見てみたいとは思っているのですが。この映画をすでに、ご覧になったかたはぜひここに行って、さるおさんの解釈を楽しんでみてください。

[2005/8/14追記]
 Augustraitのrionさんのお誘い(TB)をいただきお邪魔したところ(ここです)、ラス・フォン・トリアー監督が着想を得たというブレヒトの『三文オペラ』の中の「海賊ジェニー」という歌についての記述があり、興味深く読ませていただきました。監督はこれを三部作にする予定だとか。ぜひ見てみたいものです。でも、ブライス・ダラス・ハワードにグレース役ができるのかなあ。

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2004年
監督:ラース・フォン・トリアー(「ダンサー・イン・ザ・ダーク」)
グレース/ニコール・キッドマン(「ステップフォード・ワイフ」「ムーラン・ルージュ」「アイズ・ワイド・シャット」「白いカラス」「コールドマウンテン」「プラクティカル・マジック」「めぐり合う時間たち」「アザーズ」)
トム・エディソン・ジュニア/ポール・ベタニー
大きな男/ジェームス・カーン(「恋するための3つのルール」)
*「 」の中は、その人の作品で見たことのあるもの。

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2004/12/14

「ブログる」の「映画五段活用」

 映画やビデオを見た時、ブログろうかなと思う。でも、見た直後より、しばらくおいてからのほうが、「感激した!」「わくわくした!」「悲しかった!」以上のものが書ける。きっと、気持ちが沈殿していく時間が必要なんだろう。

 ブログれる映画は、ネタバレにならずにテーマの核心に迫ることができるもの。長々と映画論!とならないと書けないものはブログらない。ブログりたくなるような映画にたくさん出会いたい。

 ブログれば 2度楽しめる 映画かな

 *今週も「トラックバック野郎」のお題、に挑戦してみました。(お題:「ブログる場合はいつ?)

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2004/12/13

『チョコレート』"Monster's Ball"

 ハンクは父親の仕事を継いだ死刑執行官。人種差別的考えも父親からたたき込まれている。息子のソニーも同じ仕事に就いているが、その心優しさから父のように仕事をこなすことができない。ソニーは、父ハンクの叱責を受けた日に、「僕のこと憎んでいるか」と父に問いかけ、「憎んでいる」という答えを聞いた直後に、「僕はとうさんをずっと愛していた」という言葉を残し、銃口を自分に向け、死んでしまう。

 ハンクは苦悩する。冷厳な父親に愛されなかったハンクこそ息子と同様、愛に飢えていたに違いない。息子のことも、本当は愛したかったのだろう。それが父親の規範意識の呪縛に阻まれ、息子を愛することもできなければ、女性を愛して幸福になることもできなかったのだ。

 息子の死をきっかけに、ハンクは辞職する。そして、自分が死刑執行した死刑囚の妻だったレティシアと出会う。13年間、死刑囚の夫のもとに通い続け、疲れ切ったレティシアは、夫の死刑執行直後に息子までも交通事故で亡くす。絶望の渇きの中で愛情に飢える黒人女性、レティシアとの出会いで、ハンクは愛することを学ぶ。相手の渇きを感じ取り、共有し、共振していくことこそが愛することだと。

 題名となっている「チョコレート」は愛の欠如の象徴として描かれている。この邦題は原題とは異なるが、映画の中で主題を語る重要な小道具となっている。

 *死刑制度が描かれている映画には他にこんなものがあります。
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2000年
監督:マーク・フォスター
ハンク/ビリー・ボブ・ソーントン(「ラブ・アクチュアリー」「アルマゲドン」「バッド・サンタ」)
バック(父)/ピーター・ボイル
ソニー(息子)/ヒース・レジャー
マスグローヴ/ショーン・コムズ
レティシア(主演女優賞)/ハル・ベリー(「ゴシカ」「ブルワース」)
息子タイレル/コロンジ・カルフーン
*「 」内は、その人の作品のうち見たことのあるもの。

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2004/12/12

『ガタカ』"Gattaca"

-=-=-[あらすじと感想] ネタバレなし-=-=-


 「普通の妊娠」は、両親の遺伝子から最良のものを選び、組み合わされようになるという未来の話。主人公ヴィンセントは、両親の愛の行為から生まれたため、その遺伝子は「普通の妊娠」から生まれた弟とは決定的に異なっている。ひ弱な外見。劣性の象徴である眼鏡。

 生まれた時の血液検査で、未来が決定され、その遺伝子情報は、就職、結婚、人物判定すべてについてまわり、決定的なものとして扱われる。人種差別がなくなったかわりに、"劣性の遺伝子"を持つ新たな下層階級が形成される。ヴィンセントがいくら宇宙飛行士を夢みても、その未来は、生まれた時から決定されているのだ。

 そんなあるとき、思いがけないことが起こり....。ヴィンセントは困った立場に追い込まれていく。

 この映画を見終わった時、虚無感だけが残った。ところが、しばらくして思い返すと、何か懐かしいような、良い気分がわいてくる。生まれた時に決められた運命にいやおうなく流されていく中で、人々の意志が、強い闘争的な形ではなく、静かに流れるような穏やかな意志として示される。この「静かな意志」が、あとになってわきおこってくる共鳴につながるのだろう。

 希望を持つことの貴さがテーマとなり、兄弟愛や父の愛がサブテーマのようになっているのだが、私は、主人公でもない、挫折してしまったエリートである、ユージーンのことが気になってしかたがなかった。この映画で初めて知ったジュード・ロウという役者が光りすぎていたからかもしれないが。
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1997年
監督:アンドリュー・ニコル(「シモーヌ」「トゥルーマン・ショウ(脚本)」)
ヴィンセント/イーサン・ホーク(「ヒマラヤ杉に降る雪」「トレーニング・デイ」)
ユージーン/ジュード・ロウ(「クローサー」)
レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」「コールドマウンテン」「AI」「スターリングラード」「リプリー」「クロコダイルの涙」「ロード・トゥ・パーティション」「オスカー・ワイルド」)
アイリーン/ユマ・サーマン「プロデューサーズ
*「 」内は、その人の作品で見たことのあるものの題名。

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2004/12/11

『シモーヌ』"simone"

-=-=-[感想]ネタバレなし-=-=-

 売れない監督のヴィクター・タランスキーはハリウッド女優の身勝手さにほとほと困り果てていた。監督の芸術性を理解し、監督の思う通りに演じてくれるすばらしい女優はいないものか。そんな時、コンピュータで作り上げられた完璧な美しい女優、シモーヌを手に入れる。

 最初に、シモーヌがコンピュータ・グラフィックであることを言いそびれてしまったハンクは、人々を欺き続けなくてはならなくなってしまう。打ち明けられるチャンスにもつい嘘をついてしまう。さらに、そのちゃちな嘘は簡単に信じられてしまう。もうだめだと観念し、真実を語っても、まわりは信じてくれない。やることなすことすべて墓穴を掘ることに…。

 なさけない笑いを誘うアル・パチーノの演技がいい。
 鋭い目つき、しぶとい追求。この人こそ敵!。真相を暴いてくれと思っていた記者もまた、かわいいほどなさけなく、それがまたいい。

 この監督、この映画のあと、シモーヌ役のレイチェル・ロバーツと結婚したらしい。このぉ~。

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2002年
監督:アンドリュー・ニコル(「ガタカ」「トゥルーマン・ショー(脚本)」)
ヴィクター・タランスキー/アル・パチーノ(「ゴッド・ファーザー」)
エレイン/キャサリン・キーナー
ニコラ/ウィノナ・ライダー(「オータム・イン・ニューヨーク」「17歳のカルテ」「若草物語」)
記者/ブルイット・テイラー・ヴィンス(「海の上のピアニスト」)
*「 」内は、その人の作品で見たことのあるものの題名

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2004/12/10

『シティ・オブ・エンジェル』"City of Angels"

-=-=-[ちんとん的拡大解釈] ネタバレなし-=-=-

 羽根のない天使達。黒づくめの服に、長く黒いコートを羽織り、高層ビルや建築中のビルの屋上のあちこちにたたずみ、ときには高いビルにある看板の上で静かに語り合う。天使だというこの男達は不気味で、死に神のような雰囲気さえ漂う。永遠の命を持ち、食べ物を食べる必要もなく、痛みも感じない。しかし、それゆえに「感じる(feel)」とはいったいどんな感覚なんだろうと憧れている。

 「感じる」ことがどんなことかを知らない人間が、みずみずしい果物の味を知り、シャワーの心地よさを知り、そして愛を…。無垢な人間が「感じること」の段階をひとつひとつ登って、純粋な愛の感覚に達していくことがテーマだと解釈すると、ものすごく官能的なラブ・ストーリーなのではとも思えてくる。

 テーマ曲がこの感覚をすばらしく伝えている。CDを買ってしまった。

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1998年
監督:ブラッド・シルバーリング(「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」「キャスパー」「ムーンライト・マイル」)
セス/ニコラス・ケイジ(「スネーク・アイズ」「ザ・ロック」)
マギー/メグ・ライアン(「ユー・ゴット・メール」「めぐり合う日々」「電話で抱きしめて」)
*「 」内は、その人の作品で見たことのあるものの題名。

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映画に出てくる試験のシーン

 まず思い出すのが『ミスター・ビーンの大冒険』の中の試験のシーン。隣の人の答案を盗み見しようとするビーン。ささいなことに競争意識を燃やす姿が笑える。試験の時にこんな人の隣になったらたまったものじゃない。「喜怒哀楽」というよりは「笑」。隣の受験者にとっては「哀」。

 日本で公開されなかったが『Dead Man on Campas』は、もうめちゃくちゃなコメディ。落ちこぼれ学生が、学費援助を打ち切られるのをどうにかして免れようと思いついたのが、「ルームメイトが自殺した場合、その同室者は精神的を考慮し、その学期の成績がオールAになる」という規則。自殺しそうな学生をルームメイトに引きずり込もうというアイデアを実行に移すのだが…。これは「哀」「笑」「怒」のミックスが最後には「滅」がミックスされてどうなることやら。

 最後に、私の大好きな映画、『小説家を見つけたら』。ブロンクスの貧しい地域に住む少年が謎の小説家の老人と出会う話。高等教育を受けることなど考えられない貧しい地域に住む少年だが、試験の成績がすばらしかったことから、私立学校への進学の道が開ける。才能のある者はチャンスが与えられるというアメリカの良い面を描いた映画。試験の良い結果を伝えるために母親が学校に呼び出されるのだが、息子が優秀だということなど考えてもみなかった母親の素直な喜びの顔が良い。これは文句なく「喜」。

 トラックバックの「今週のお題」、「テスト喜怒哀楽」に初挑戦してみました。

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2004/12/09

『ぼくの神様』"Edges of The Lord"

-=-=-[作品のメッセージ] ネタバレなし-=-=-

 ナチスのユダヤ人強制連行を逃れるため、11歳のロメックは、ポーランドの片田舎の農家に、ただ1人預けられる。

 心の中ではユダヤの神を信じていることを隠しながら、カトリックとしての生活を送るロメック。彼の、神父の部屋での一場面。神父は心のうちを語るロメックに正餐式のために用意したパンをすすめる。ロメックは、キリストの肉を意味するパンを口にすることはできないと、たじろぐ。その心を理解した神父は、これは丸いパンの型を抜いたあとのはじっこ(=edge)だから大丈夫だと言う。

 一方、ロメックが預けられた家の子、トロは、村人がナチスに虐殺される現場を見てしまったことをきっかけに、深く傷つき、犠牲者としてのキリストに自分を同化させようと、奇怪な行動を取るようになる。

 最後の場面に、このトロの行動と、はじっこ(=edge)の場面とを重ね合わせると、キリスト教とユダヤ教の共存の図式が、子ども向けの絵本のように単純な形で浮き出してくることがわかる。

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2002年
監督:ユレク・ボガエヴィッチ
トロ/リアム・ヘス
ロメック/ハーレイ・ジョエル・オスメント(「シックス・センス」「ペイ・フォワード」「A.I」
ヴラデック/リチャード・バネル
神父/ウィレム・デフォー(「イングリッシュ・ペイシェント」「ルル・オン・ザ・ブリッジ」)
2002年
*「 」内は、その人の作品で見たことのあるものの題名。


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2004/12/07

『ロスト・イン・トランスレーション』"Lost in Translation"


 家族との間に微妙な温度差を感じている落ち目の俳優ボブ・ハリスと新婚でありながら孤独感を持っているシャーロット。そんな2人が東京で出会う。

 初めて訪れた国で、空港から一歩外に出る時ほど緊張するものはない。ホテルの中はまだ異国人をあいまいに包んでくれるが、言葉の通じない外を歩くと、異質なものに包まれた「自分」を強く意識せざるをえなくなる。外側の刺激の強さとは裏腹に、自分の意識は、それを受け取る自分の内面にどんどん向けられて行く。

 ボブとシャーロットの不安感と欠落感、それが2人を引きつけ合い、自分の心を見つめ直す。そのための舞台として、この異国感覚は重要な要素となっている。

 彼らの目を通して見る、見慣れた日本の風景はいつもと全く違って感じられ、異国に一歩踏み出した時の自分の感覚がよみがえってきた。

2003年/監督:ソフィア・コッポラ「ヴァージン・スーサイズ」 制作総指揮:フランシス・F・コッポラ「奇跡の詩」/ボブ・ハリス/ビル・マーレイ/シャーロット/スカーレット・ヨハンソン「真珠の耳飾りの少女」「アイランド」「理由

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2004/12/06

『フィフス・エレメント』"Fifth Element"

-=-=-[みどころ] ネタバレなし-=-=-

 みどころ満載のSFだが、一番輝いているのが、ミラ・ジョヴォヴィッチ演じるリールー。宇宙人が残していった細胞からDNAを抽出して作られた女性。高い知能、強さ、赤子のような感受性と野生味を備えた真っ赤な短髪を持つ。強いけれどフラジャイル(fragile=脆い)。

 船での戦闘場面は、マシンガンでどんどん人が殺されて行く。こういう場面、普通は好きではないのだが、この映画のここに限っては、不思議な魅力を感じる。「暴力的な戦闘場面」と「異次元空間のような不思議な歌を歌う歌手」とが交互に映され、その2つが織りなすものが、リールーの「強さ」と「脆さ」の表裏一体となった魅力と重なるからだろう。この表現力は秀逸だ。

 このあたりが題名の意味につながっていくのだが、ネタバレになるのでこのへんで…。

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1997年
監督:リュック・ベッソン(「レオン」)
コーベン/ブルース・ウィリス(「シックス・センス」「隣のヒットマン」「アンブレイカブル」「ベイビー・トーク」)
コーネリウス神父/イアン・ホルム
リールー/ミラ・ジョヴォヴィッチ
ゾーグ/ゲイリー・オールドマン(「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」「レオン」)
ルビー/クリス・タッカー(「ラッシュアワー」)
*「 」内は、その人の作品で見たことのあるものの題名。


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『クッキー・フォーチュン』"Cookie's Fortune"

-=-=-[あらすじと感想] ネタバレなし-=-=-

 1人暮らしの老女クッキーが自殺。最初に発見したのはクッキーの姪。町では"インテリ階級"で長老格のクッキーの姪、カトリック信者の身内が自殺なんて!と他殺に見せかける工作をしたことから、心優しく穏和な老人ウィリスに嫌疑が掛けられ、捕まってしまう。

 田舎町の人たちは間が抜けていて、証言はあいまい。捜査はなかなか進まない。地元警察も今ひとつぴしっとしない。鉄格子の中の"凶悪犯"ウィリスを囲み茶話会状態。偉そうな捜査官までやってきているのにと、観客はやきもきさせられる。

 ところが、スローテンポな人たちを見ているうちに、知的でもなく、鈍く見える人たちのほうが、教養の垢にまみれてテキパキ働く人たちより、的確に真実を見ているのだというメッセージがじわーっと伝わって来る。

 「どうして彼が無実だとわかるのか」「彼と一緒に釣りをしたから」という会話は、象徴的。

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1999年
監督:ロバート・アルトマン
コーラ/ジュリアン・ムーア(「めぐりあう時間たち」「シッピング・ニュース」「ハンニバル」「マップ・オブ・ザ・ワールド」「ビッグ・リボウスキー」マグノリア」)
カミール/グレン・クロース「ステップフォード・ワイフ
エマ/リヴ・タイラー
ジェイソン/クリス・オドネル(「セント・オブ・ウーマン~夢の香り~」)
ウィリス/チャールズ・ダットン(「シークレット・ウィンドウ」「ゴシカ」)
*「 」内は、その人の作品で見たことのあるものの題名。

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